なんだかすごく騙されていたと思うこと

 こんにちは。さつき台動物病院の院長 多田です。新卒初任給が大手企業で爆上がりしているらしいです。ただ、専門家は冷ややかな目で見ている面もあり、採用後の昇給や賞与・福利厚生で結果的に企業側が辻褄あわせてくるんじゃないかとも言われています。そう考えるとやっぱり2000年くらいまでの我々の父親世代が恩恵をうけた年功序列昇給&終身雇用が最強なのではと思う次第ですが、これは朝鮮特需、ベトナム特需、太平洋戦争で特定世代の男手が減ったためしばらく労働力が不足していたというすべて戦争の恩恵であった点を考えると複雑な気持ちになります。

 

 さて、そんな私はというと就職氷河期世代と言われる世代でして、さらにペーペー社会人だった時期とリーマンショックが重なる会社側からしたらとんでもないスーパーお荷物世代でした。たまたま職業が獣医師で、卒後5年位も学生時代の勉強の延長で、仕事=実習多めの勉強でなんと給料ももらえるラッキー!と思って働いていたので当時は特になんとも思わないどころか、もっと実習させてくれよ!と考えていた人間なので、劣悪な労働条件(そもそも労働と思っていない)も特に気にしていませんでした(夜勤も楽しかった)。

 

 私が学生時代だった2000年代、テレビで「将来の日本は9割の年収200万円と1割の年収2000万円の層に分かれる!」と専門家が声高に主張していました。将来の収入の話をしているわけですから、この主張は当然将来の労働者である学生の私を対象とした主張であったのは間違いありません。勉強の成績がいくら上位1割に入っていても、それが金を稼ぐ能力に直結するとは思えないし、そもそも医師ではなく獣医師なんてどう考えても趣味の延長線上で生きていこうと思っている自分の将来は年収200万円側に違いないと確信していました。

 

 、、、、20年以上たった今、最低賃金が全国最下位の県で週40時間勤務賞与無しの条件で働いても、額面の年収が約200万円です、東京都なら250万円位です。それどころか大手新卒初任給が30万を超えたりしているわけです。さらに田舎から都市への人口移動傾向は変わらずあり、都市部では最低賃金で募集してもなかなか人手が見つからない傾向にもあります。結果、テレビの専門家に騙された!と思うわけです。

 

 ただ、テレビで言ってた事が正しいなぁと思うこともあるわけで。今の若者はタイパ重視だと言われていますが、タイパの前は1万時間の法則というのが定説でした。タイパってせいぜい2時間の映画を倍速で見て1時間で済ますとか、寿司屋の修行が無駄とかいう話だと思うのですが、何にしても一通りの事ができるようになるにはある程度の時間がかかるわけですよね。30分で1流寿司職人にはなれないんですよ。そこで、平均1万時間位はかかりますよ!という話だったと思うのですが、これはあくまで「平均」で1万時間の人もいれば3万時間かかる人もいるわけです。寿司職人になるための階段が10段あるとしたら、10段登るのに1万時間なら1段あたり1000時間かかる計算になります。タイパ重視って本来は1000時間やった時に振り返って「あそこでちょっとダラダラしたから改善しよう」と考えて次の1段を950時間で終わらせるって事だと思います。2時間の映画を倍速で見て1時間で終えるのは、ただ単にダラダラ1時間映画みてるのと同じだと思います。1万時間の法則に該当することわざは色々あるのにタイパ重視に該当することわざは見当たらないので、ことわざってやっぱり先人の経験の結晶だなぁとつくづく思うわけですが、1万時間の法則は流行らなかったけどテレビが真実を拡散してた稀有な例であったわけです。

 

 大学6年になったとき同級生達と「なんか遊んでばっかりの6年間過ごしたけど、この6年で勉強したことって4年あれば十分だったよな」という会話をした記憶があります。獣医学部はタイパ悪かったんですね(遊び面はタイパ最高でした。帯広は何食べても美味いし、最寄りのスキー場まで車で20分でしたから)。ちなみに私は上記のように過酷な環境で働いていた事もあり、獣医師としての経験は卒後3年未満で1万時間に達していた事が試算により判明いたしました、、、。こういうのが正しく最高のタイパだと思いました。