新百合ヶ丘で体験するインバウン丼

 こんにちは。さつき台動物病院の院長 多田です。築地じゃなかった豊洲の市場?食堂?レストラン?で提供されるまぐろ丼だか海鮮丼が6000円とかしてるらしく、主に外国人向けの価格設定らしく「インバウン丼」と呼ばれているらしい。海鮮丼6000円って正直海産物が有名な地方、例えば私が数年に1回行く富山を例に出せばちょっと良い寿司屋で食べればそんな値段である(実際は6000円はしないと思うが、輸送費地価平均賃金を考えると同じような価格設定であるといって間違いは無い)。

 

 この「インバウン丼」の価格を見て、「日本は今こそさらなるインフレにすべきである!」と騒ぎ立てている人もいるらしいが、私はそうは思わない(そもそも以前言われていた2%のインフレ目標は達成されているし、国によってはインフレしすぎてとんでもなく生活しづらい場所もある)。そもそもなぜ市場で海鮮丼を食べるのか?

 

理由1.新鮮だから

 ノーそうではない。昔、帯広から函館に遊びに行った時、函館朝市でイカソーメンを食べようと(今は函館でイカは採れなくなりました)フラフラ歩いていると、カニを買わせようと色々な所から声をかけられる。北海道のカニは主にオホーツク海の産物である。つまり、カニは紋別ー帯広ー函館と移送されて売られている。一度自分の横を通り過ぎて輸送費が加算されたカニをわざわざ函館まで追いかけて買って、また帯広に連れて帰って食べる気にはならない。市場で買うものが本当に新鮮かはわからない。

 

理由2.安いから

 釧路の和商市場の勝手丼は結局割高な感じがずっとしていたが、イクラ丼はちょっと安い感じがした。でも実際にはそんなに安くなかった気がする。清水の市場で食べた刺身定食は2500円位だったと記憶しているが、信じられない位の刺し身の量で、結果的にお得だった気がする。清水の刺し身定食は寿司屋で同じものを食べたら倍位はするのでは無いだろうか?市場の食堂は、サービスはあまり良くない、店も豪華ではないし、箸も安い割り箸である。でも安さはありそうだ。これが市場で海鮮丼を食べる動機になっている気がする。

 

 そう考えると、大都会東京に旅行に来た旅行者が新しく移転したTOYOSUでシーフー丼を食べようとした時、安いものよりもしっかりとした思い出に残るものを食べたいと考えたとする。そうなったときに、秩序が守られたキレイな環境でしっかりとしたサービスで海鮮丼を食べようとすると適正価格のものを食べることになるであろう。そう、「インバウン丼」の価格は「適正価格」なのである。我々は「市場=安くて美味しい飯が食えるテーマパーク」と認識しているので、「市場の海鮮丼」はそれを実現すべく安く提供されている「お得丼」なのである(その分サービスも市場基準でそれがまた市場をテーマパーク化させている)。夜10時以降の新宿発小田急線に必ず「頭からネズミの耳が生えたままの人間」がいるように、テーマパークに魅了された人間は、イカソーメンをキメたあとにうっかりオホーツク産のカニを買って帯広に帰還してしまうのである。カニは道中で「あれ、私ってオホーツクに帰れるの?」と勘違いするであろう、カニにも買った人にもとても気の毒なことである。ちなみに私はカニが嫌いなので食べないし買わない。そしてカニが好きな人に1年間カニを食べたいと思わなくする方法を知っています。

 

 さて、インバウン丼は適正価格になっただけという話にこれだけスペースを取ってしまったが、これを根拠によりインフレにさせたのでは日本全体がボッタクリランド&ボッタクリシーになるだけである(ネズミの国は私の学生時代の倍になりましたが、今の「大人には」適正価格だと思います。ただ、本来は大学生以下の子どもが楽しめる価格のテーマパークであって欲しいと考えています)。アダム・スミスは「神の見えざる手」で自由経済のもとでは需要供給のバランスにより自然と適正価格が決まると解いたが、頭に生えたネズミの耳は果たして適正価格なのだろうか?市場のイクラ丼は適正価格なのだろうか?それを調査するために以下の試みをした。

 

 新百合ヶ丘周辺で3件の鰻屋を調査した。

・デパート(死語)の上の鰻屋ーなんと1万円

 無料で米を大盛りにしてくれようとしたが、食べられる自信が無く断った。ウナギは国産だと思う。味は美味しい。昼時であったが、周りにはリタイアされた御夫婦が何組かおり、お米を残して、昼から酒を飲んでいた。なんだか私は社会保障を維持するために重い納税を課せられた奴隷のような気分になり悲しくなった。ご飯は大盛りにしなくて良かった。私には納税の義務がありますので、今後ウナギに1万円は払えませんという感想。店に非は無いけど、割高ではあると確信した。お金持ちのリタイア御夫婦がいらっしゃるお店に昼間から行くのは私の精神安定上良くない。

・北部市場の2階の食堂のうな重ー2000円位

 「市場だから安い!」と思いウキウキしながら入った。周りは仕事の途中で寄ったサラリーマンが多く、ぱっと食べてぱっと帰る。店の佇まいは市場感が出てて良い。これでウナギが美味しかったら良かったのだが、スーパーで買うウナギの味だった。やっぱり2000円で美味しいうなぎは無理か、、、、。という結論に達する。2000円出すなら国産のウナギをスーパーで買って家で食べようと思った。

・寺家の鰻屋ーなぜかざるそば&ミニうな重セット3500円位

 いまどき3500円程度で美味しいウナギが食べられるわけ無い!市場の二の舞いか!と思い食べてみたが、美味しかった。実は奥さんと二人でウナギを食べに行くことにしたんだけど、1人5000円とか出したくなかったから値段で選んだけど正解でした。これがいまの適正価格(20年前より1000円位高くなった感じ)なのかなと思いました。

 

 結局、昼間から酒を飲みたいリタイア夫婦は歩いて行けるデパートでウナギを食べる。もし価格が5000円であれば私のような納税奴隷が迷い込み「米を残すな〜」と暴れる可能性があるので、それを排除するためにも昼から1万円のウナギを提供するのは適正価格である。寺家で3500円で美味しいウナギが食べられる以上、北部市場というテーマパークでは2000円でウナギを出す必要がある。そうなるとやっぱりスーパーのウナギになってしまう。つまり上記3店はそれぞれの適正価格で提供していて、やはり豊洲のインバウン丼も単なる適正価格なのである。

 

 最後に、動物病院の適正価格って何で決まるのか?院長の年齢?学歴?見た目?トーク力?アピール力?治療内容?技術?資格?スタッフ数?家賃?建物のでかさ?待合室の無料ドリンク? 一つ思うのは「さつき台動物病院」から「さつき台動物医療センター」という名前にすると、50%位高くしても受け入れられそうな感じがしてます。しかし、これは動物病院をテーマパーク化してるだけなのかもしれない。