全身の毛穴が開く瞬間

 こんにちは。さつき台動物病院の多田です。我が家には幼少期より父親に強く禁止されていた遊びが2つあり、1つは「バイク」もう1つは「登山」でした。バイクが禁止されていた理由は私自身がバイクに乗る(正確には乗って事故を起こしまくる)まで解りませんでしたが、登山は私の父が大学時代に剣岳で滑落し大怪我を負った話を聞いていましたので、危険な趣味であることは理解していました。しかし、

 

私が大学時代を過ごした北海道(しかも道東)は、、、、

 

バイクと登山のためにある島だったのです。

 

父も独身時代に北海道に住んでいた時期があるらしいので、自分の息子が帯広に住んだら危険な遊びに手を出すことは容易に想像できるはず、と思いひとまずバイクに手を出すことにしました。

 

 購入したバイクはバイト代を貯めて購入したカワサキZZR400、相場が35万円のところ20万円で購入しました。このバイクから「モノを買うときは相場よりも極端に安いものを買ってはいけない」ことと、「中古車で失敗しても、命が無事なら大成功と思え」という事を学びました。そもそもバイク屋の親父が「お兄さん、悪いこと言わないからこっちのホンダCB400スーパーフォア(16万円)にしなよ」というアドバイスを聞かずに買ったのだから仕方ない。人生とは自分の乗りたいバイクに乗るためにあるのです。

 

 このZZR400、エンジンがいつかかるかわからない代物で、かかればお出かけできますが、かからなかったらバイクで行こうと思っていた場所に急遽予定を変更して車で出かけるという「女心とZZR400」というほど気まぐれなバイクでした。そのためツーリング中にトイレに行く際にもエンジンが止められないことや、低回転のトルクも無く発進が激ムズで、しかも車体が200kgを超えるため、発進→左折中にエンストしそのまま転倒、さすがに給油中はエンジンを切らないと危ないのでエンジンを切るのですが、遠くにツーリングに行き給油する際にはエンジンを切ったら次にかかるかわからないので、エンジンを切らずにこっそり給油(これはこれで危険)したりしていました。ただ、ブレーキはしっかりと効いていましたので、いまこの文章が書けています。

 

 その後ZZR400は10万円の整備を受けて絶好調を迎えるのですが、5年生の夏休みに利尻島へ出発するも、自宅から300m位のところで強引に右折してきた車を避けて大転倒し、そのまま私はバイクを降りることになりました。この瞬間は眼前がスローモーションになりましたが、全身の毛穴は開きませんでした。全身の毛穴が開いたのは、まだエンジンのかかりが悪かった時に、一人で深夜の峠でトイレに行きたくなりエンジンかけたままトイレに行き、用を足して出てきた時にエンジンが切れていた時です。生まれて初めて目と耳を同時に疑いました。本来ならドロドロとエンジン音がするはずが全くの静寂と暗闇が待っていたのですから。幸いトイレの神様に祈ったらエンジンはしばらくしてかかり無事に自宅に帰ることができました。そしてこの出来事をきっかけに10万円の整備を決意したのでした。

 

 登山で毛穴が開いたのは雌阿寒岳と阿寒富士に一人で登った時に、何を間違えたか阿寒富士の頂上に着いた時に、今までたくさんいると思っていた登山者が一人もおらず、自分が山で独りぼっちになったのに気がついた時です。よく考えたら出会った人はみんなすれ違った人たちだったので下山中の人達だったんですよね。山頂の素晴らしい景色を観ながら全身の毛穴が開きました。でも本当にまずいと思ったのは、下山中に道がなくなったのに、足が痛くて引き返す事ができずに一か八かかろうじて人が通った跡っぽいところを歩いた時で、もう毛穴が開きっぱなしでした。危うくヒグマの餌になるところでした。

 

 バイクに乗って風になってる時も、山で頂上からの景色をみている時も最高に危険で最高に気持ち良いものです。それこそこのまま死んでも良いと思うくらい、満ち足りた気になります。それを踏まえて考えると自分が歳をとり70代になって衰えて先が見えてきた時に、危険な事をせずに90歳まで生きてベッドの上で死ぬよりは、たとえ死の危険があってもバイクに乗って登山しに行くという選択もアリなのではないかなぁと思うのです。

 

 まぁ開業資金の大借金をまだまだ返済し続けないといけない私がバイクでコケて死んだら、金融機関の担当者に大迷惑をおかけすることになるため、まだまだ20年位はバイクと登山は禁止のままです。しかし、2045年以降は私が元気であれば、登山のための臨時休診、入院に伴う臨時休業、突然の廃業などがあるかもしれません。