90年代にはステップワゴンでしか買えない新しいわくわくがあった。

 こんにちは。さつき台動物病院の院長多田です。新型ステップワゴン、町中でちらほら見かけるようになりましたね。初代を思わせる四角いデザインが逆に新しいですね。

 

 1990年代初頭、オデッセイでの成功から「日本人はスポーツカーではなく、室内が広く、燃費の良い車をを欲しがっている」という事を感じ取ったホンダはステップワゴンなる車を発売します。2005年頃、私の友人が突如中古ステップワゴンを100万円で手に入れ、私とともに3泊4日の車中泊旅行へと旅立ったのでした。この旅行、未だに私の中の旅行ベスト5に入る楽しさであり、特にどこに行ったのが良かったというよりは、夜寝る河原を探し、橋の下で焚き火をし、肉を焼き、車で寝る、ただこれだけがとてつもなく楽しく、ステップワゴンという車の出来がどうこうよりも、1990年代にはステップワゴンでしかできないわくわく体験がそこにはあったのです。

 

 そのステップワゴンが販売不振にあえいでいます。先代ステップワゴンではわくわくゲートなる、荷室ドアが2方向に開いて便利な機構が備えられ、発売された時に「ミニバンの欠点である荷室ドアデカすぎる問題が解決された!しかも1500ccのターボ車でライバル車よりも税金が安い!この車は必ず売れる!」と私は確信しました。しかし、実際は販売不振でした。販売不振の戦犯はわくわくゲートによる左右非対称のデザインとされていますが、私は違うと思います。

 

 ステップワゴンに冬の時代が到来したポイントはわくわくゲートではなく、トヨタに負けたからだと思っています。わくわくゲートはすばらいアイデアです。ミニバンにはトヨタ、ノア・ヴォクシー・エスクァイア、日産セレナ、ホンダステップワゴンと3車種ありますが、ステップワゴンの一人負けが続いています。トヨタ3兄弟が素晴らしいということも無く(自動ブレーキや運転支援システムはトヨタが一番遅れていた)ため、理由が謎だったのですが、おそらくトヨタを買う層が本当に欲しいのはトヨタ・アルファードであろうと思います。かつて「いつかはクラウン」と言われクラウンに乗りたいけどマークⅡを買うこの現象が、アルファードでも起きているのであろうと思います。私はこれを「いつかはアルファード」現象と名付けました。クラウンの下にマークⅡ、クレスタ、チェイサー三兄弟がいたように、アルファードの下にはノア・ヴォクシー・エスクァイア三兄弟がいました。しかもアルファードには兄弟のヴェルファイアがいます。わくわくステップワゴンはアルファードによって販売不振におとしめられたのです。日本の社長、政治家、成功を手にしたおじさん(お姉様方はなぜかスポーツカーオープンカー外車が好き)が乗るはずであった成功証明書のクラウンの息の根を止めたアルヴェル兄弟であればステップワゴンを販売不振にすることなど容易いことのはずです。

 

 世の成功者と呼ばれるおじさんも社長も政治家も、みんなクラウンではできなかったアルファードでワイワイ車中泊を楽しんでいるようですが、さすがに河川敷に黒塗りのアルファードを停めて焚き火で何か焼いていたら漂ってくるのは焼き肉の匂いではなく、犯罪の匂いです。90年代にステップワゴンはわくわくを買える唯一の選択肢でした。私のような世のおじさんはみんなアルファードに憧れ、大人になってアルファードを買うことで成功を自覚し、大人のわくわくを感じたいと思っている(と思う)のですが、本当は昔のようにわくわくしたいのです。しかし、本当のわくわくはステップワゴンでしか得られないのです。軽バンでソロキャンプなんかしている場合じゃないのです。学生時代の友達と、家族とステップワゴンでわくわくして、わくわくさせてあげないといけないのです。ステップワゴンって、新型ではわくわくを全面に押し出して、キャンピングカーとミニバンの中間みたいなコンセプトにすれば、ソロキャンプブームに乗れたのになぁと思う今日このごろです。

 

 そして、新型クラウン、あのデザインと4WDで果たしてマトモな覆面パトカーになれるのでしょうか?