R-1グランプリ2022の感想

 こんにちは。ヨーグルトメーカーで絶賛R-1を密造中のさつき台動物病院 多田です。R-1の密造においては、牛乳に砂糖を入れ乳酸菌の餌となる乳糖以外にも糖分を入れておくことがコツなようです。これはフランスパンと食パンのレシピの違いと同様で、フランスパンには砂糖は入らず食パンには入っています。食パンにはパン酵母の餌となる糖分が多く添加されているため、フランスパンよりも食パンの方がドライイーストが少なくても発酵がうまくいくのだそうです。フランスパンは栄養の少ない状態でうまく発酵させる必要があるので、実は難易度が高いパンなのですがホームベーカリーだと簡単にできますね。

 

 さて、本日の話題はピン芸人日本一を決めるR-1です。昨年のM-1を見ていても思ったのですが良いネタと悪いネタの違いでひとつ気がついた点がありました。それは「面白さを感じるために、予備知識をどの程度必要とするか」ということです。ネタを作る際に、ネタ作成者の持つ知識から面白いことを考えるのですが、その結果として笑ってもらうためには、客に同等の知識を要求してしまうことになるという問題点に気が付きました。例えばモグライダーのネタは「蠍座の女と美川憲一」でしたが、美川憲一も蠍座の女もさらにはコロッケが美川憲一のモノマネによって「誇張モノマネ」というお笑いの新ジャンルを開拓したという歴史を知らない人にとってはイマイチ面白みを感じられないネタとなってしまうのです。錦鯉の1本目も「50歳のおっさんが若者と合コンに行く」というネタでしたが、「ジャンプの主人公」「紙芝居の水飴」「50歳になると膝が痛い」など若者にはわからない表現もありましたが、そもそもこのネタ自体がジェネレーションギャップで伝わらない事をおじさんがまくしたてるという点に面白みがあるため、ジェネレーションギャップを感じない人には「それは若者には伝わらないだろ〜」と楽しめるし、ジェネレーションギャップを感じ感じる人にも「おじさんが何かわからないことを言ってる」という様に楽しめる秀逸なネタになっておりました。2本目のネタも「猿を捕まえようとして、おじいさんと猿を間違える。そして最後にバナナを食べたくて自分が仕掛けた罠に3回はまる。」という予備知識皆無の幼児でも笑えるネタになっており、まさしく優勝にふさわしいネタになっていたと思います。そう考えると2020年のマジカルラブリーの電車でおしっこも2019年のミルクボーイのコーンフレークも予備知識が必要無いネタでした。

 

 予備知識の必要性の低さとしては、お見送り芸人しんいちの優勝は妥当であると思います。過去のR-1を思い起こすと、うどん芸のほっしゃん。やアキラ100%のお盆芸など予備知識を一切必要としないわかりやすいものもあるし、ザコシショウやじゅんいちダビッドソンのようにその時期に旬であった人物のモノマネも予備知識が客に入った状態でネタができるパターンで優勝することもありました。博多華丸の児玉清のモノマネは、児玉さんが長年アタックチャンスをやり続けた集大成と言えそうです。ディラン・マッケイは海外ドラマを観ない私にはよくわかりませんでした。

 

 2020年代のお笑いとは「普遍的に知られているもので、笑いを生みだす。」事がキーになりそうです。

 

 ただ、R-1優勝者で印象に残っているのが、三浦マイルドと濱田祐太郎です。この2人のすごいところは、三浦マイルドは今まで私が会ったことのないようなダメなおじさんから受けた「ありがたくないアドバイス」を紹介するネタ、濱田祐太郎は「目が見えない人が思ってることで、言われてみると滑稽な事」で、どう考えても一般人が予備知識として持っていない事を題材にしているにも関わらず、ネタ中に簡潔に説明する(または巧みに演じる)事で「客の予備知識が不足してるなら、ネタの中で予備知識を客に注入して、結果として笑いを取る」という超人的な力技を行っている点です。2人が優勝した年は、1本目のネタを観た時点で、この2名の優勝は確信できました。残念なことに、現在この2名をテレビで見かけることがほとんど無いことで、テレビ番組もまた内輪ネタの中で作られているため、面白い番組が中々できないのでしょう。