鑑定なんでも探偵団

 こんにちは。さつき台動物病院の多田です。好きな番組のひとつに「なんでも鑑定団」がありますが、あの番組の醍醐味は専門家の詳細な解説を楽しむ点であると思いきや、偽物を大金で買ってしまった人のガッカリする姿を全国民に晒す事であって、ちょっと意地悪な番組だなと思ってしまいますよね。

 

 さて、日々アップデートされる最新の医療情報ですが、これが珠玉混交どころかまたとんでもない偽物が混ざっておインチキ情報を掴まされないように情報を見極めていかなくてはなりません。(ちなみに定説が10~20年後に否定されることもあります)。

 

 先日ついに犬の慢性心不全に使用する利尿剤フロセミド(古参)vsトラセミド(新参)の治療成績を評価した論文が出ました!結果は

①短期成績では両者に違いはない

②長期生存は新参に分がある

③有害事象(副作用)は新参が多い

うーん、新参は長生きできるけど副作用も多いのか、、、。

さて、どれくらいの症例数で研究したのかな、、、

えっ、390頭!やりすぎでしょ。

 くわしくはここのページに書かれています。書いた人は中々の切れ者だと推察します

要約すると

・症例数が多いと小さな差が検出できる(逆に大差無くても差があると誤解する)

・症例数が少ないと差が大きく無いと検出できない(小さな差は差がないと解釈される)

・そのため、二者の差を検出したい時は症例数を少なく、二者に差がないことを証明したい時は症例数を多くする

・↑の逆をやると、インチキ臭い論文になってしまう(全然差が無いのに差があるように結果が出てしまう)

・症例数の設定は非常に大事!(たくさんやればいいってもんじゃない!)

ということのようです。

きっと上記をたくみに使って、自分の都合の良い論文を書いてる人ってたくさんいるんでしょうね。研究には適切な検体数に留める勇気も必要ということです。

たくさんやった中で良いデータだけ取り出して検体数を適切にしようとしても 、そもそも良いデータを選出した時点でその実験は八百長です。

 

 我々の中には専門的な研究をしている獣医師もいますが、上記のような統計処理ははっきり言って専門ではありません。つまり、多くの研究(獣医に限らず)は

・統計の素人(例:獣医師)が計画した実験を

・その分野のエキスパート(例:獣医師)が実験し

・統計の素人(例:獣医師)が分析し

・その結果を毎日動物の診療をしているただのおじさん(例:わたし)が読む

というプロセスを経て陽の目を見ています。

ハッキリ言って

・素人のおじさんが買って

・プロが鑑定する

なんでも鑑定団の方がずっとマシです。

 

 さて、上記の論文は症例数390頭はさすがに多いと思います。二者に差が無いことを証明するのであればまだ良いかと思いますが、どちらが優れているかという事を証明するには信頼性が低くなってしまう。そして我々が知りたいのは二者の治療成績の差なのです。おそらく症例数は30~60頭ずつ、約1/3~1/4程度であれば丁度良い程度の差をみつけることができるのではないかと思います。この論文では差がない①は信頼できる、差がある②は信頼できない(「生存期間が数日長かった」のような無視しても良い差を検出してしまっている可能性がある)、①の短期治療成績が変わらなく、③の副作用が多い、②は症例数が多すぎるので無視、とすると副作用を考えると古参が有利となります。

 

つまり、適切な仕事をするには専門だけ勉強してもダメな場合も多いのです。

そのため国公立獣医学部に入るためには、国語と社会が必要なのです(多分)!

なんで古文漢文を勉強しなきゃいけなかったのか、ついにわかりました

(私は国語を全く勉強せずに、適当に回答していましたが、、、)。

学生のみんな、社会に出たら飲み屋で知り合った人から仕事とってくる営業とか、

釣りがきっかけで社長に好かれたりとか、漢文がきっかけで結婚できたとか、

きっと色々あるぞ。面倒だけど学校行って勉強して、終わったら遊んだほうがいいぞ。

そうしないと、変な論文かいちゃうぞ。